最新知見で挑むMRSA対策
■MRSA診療❸MRSA治療薬の各薬剤の位置づけ
倉井 華子
1
1静岡県立静岡がんセンター 感染症内科 部長
pp.281-285
発行日 2025年10月15日
Published Date 2025/10/15
DOI https://doi.org/10.34426/ict.0000000585
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MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は1961年に初めて臨床分離され,その後欧州を中心に拡大していった。抗MRSA薬の開発はMRSA発見よりも古い。バンコマイシンはEdmund Kornfeldにより1956年にボルネオ島のジャングルの土壌から見つかったAmycolatopsis orientalis(旧名Streptomyces orientalis)より分離された。もともとは黄色ブドウ球菌や連鎖球菌用に開発された薬剤であったが,βラクタム系抗菌薬と比較すると効果が劣ることと副作用が多いこともあり臨床で用いられることはなかった。1970~80年代に院内流行としてMRSAが世界的に拡大し,バンコマイシンは実地で再評価されたが,腎毒性と治療域管理の難しさが臨床課題となった。1990年前後にはテイコプラニン,ダプトマイシンも選択肢に上がるようになり,現在に至るまでリネゾリドやテジゾリドなどの新規製剤も開発が進み,選択肢が飛躍的に拡大した。各薬剤の特徴を踏まえた適切な選択が重要であり,本稿では国内で使用されている抗MRSA薬を対象に,薬剤ごとの特徴や病態別の選択を提示する。

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