一口メモ
その後のMRSA
町田 勝彦
1
1東京慈恵会医科大学臨床検査医学教室
pp.140
発行日 1996年6月15日
Published Date 1996/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902760
- 有料閲覧
- 文献概要
かなり話題となったMRSAもしだいに鎮静化しているようである.それは院内防疫対策の充実,院内MRSAの実態判明と治療薬の出現などによるものと思われる.院内防疫対策としては院内感染対策委員会の設置,防疫対策の教育,ウエルパスなどの消毒薬やサージカルマット,強酸性電解水,オゾン水や使い捨て手袋などの使用,MRSA保菌患者の識別,水道蛇口の自動化,監視培養などが行われてきている.
院内MRSAの実態解析として,さまざまなマーカーを調べた疫学調査が行われている.筆者らも院内で分離されたMRSAを用いてファージ型,プロファージ型,ゲノム型,薬剤感受性パターン,コアグラーゼ型,エンテロトキシン型などを調べ,院内におけるMRSAの疫学的検討を行ってきた.その結果を分析すると3つのケースが考えられる.第1のケースは内因性感染症の可能性である.例えば50歳の男性で急性骨髄性白血病(AML:白血球数30,100/μl)で入院した患者の場合,入院時には咽頭,尿,糞便からMRSAは検出されなかったが,AMLに対する化学療法を始めて白血球数が1,800/μlに低下した時点で発熱を認めたためセフェム系抗生物質CAZに加えてCPZ,AKM,SBT,IPMなどが交互に投与された.その2週間後に各検査材料からMRSAが検出され,疫学調査で3種類のMRSAを認めた.第2のケースは水平感染である.第3のケースは患者自身が持ち込んできた可能性である.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.