特集 結核問題の展望
結核の療養施設
中村 濶三
1
1厚生省医務局国立療養所課
pp.50-53
発行日 1954年5月10日
Published Date 1954/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200737
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1.はしがき
長い間,日本人の死因中第1位を保つて来た結核も,最近著しく発達した外科療法や化学療法の影響を受けて,その死亡者数は急激に減少し,老人病といわれる癌や腦出血にその席を讓つたことは周知の事実である.併しこのことは直ちに結核患者の数の激減を意味するものでもなく,又結核対策の重要性が俄かに後退したことを意味するものとも言えない.何故なら疾病対策の重要性はその疾病による死亡者の数はもとより,患者数や,伝染性の有無,或いは,療養期間,それに要する医療費,患者の年令層,治癒後の労仂能力の喪失の有無など,複雜な因子によつて左右されるものであり,結核をこれらの因子の一々と対照してみた場合,依然として,他の疾患のそれに比して一頭地を拔いているということが断言できる.厚生省が本年度着手した結核実熊調査の結果では,患者数として従来推定していた150万を遙かに上廻る292万という数字を示し,而もそのうち,生活責任者である壯年患者(30才〜49才)が壯年の53%を占め,全年令層中最高を示しているがそのことだけでも,その重要性を裏書きするに足りると言える.
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