【連載】映画と、生きるということ(20)
虚構世界と現実世界 『バービー』
岩田 健太郎
1,2
1神戸大学大学院医学研究科 教授
2神戸大学医学部附属病院感染症内科 診療科長
pp.74-75
発行日 2025年7月20日
Published Date 2025/7/20
DOI https://doi.org/10.32181/jna.0000002202
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- 文献概要
着せ替え人形「バービー」の実写映画
2023年のヒット作。超面白かった。未見の方はぜひご覧いただきたい素晴らしい作品だ。バービー(Barbie)は言わずと知れた着せ替え人形である。私も娘に買ったことがあるけれども、本作を観るまではバービーを製造したマテル社のことも、バービーを考案したマテル社のルース・ハンドラーのことも何も知らなかった。しかし、それでも心配はない。本作はバービーや着せ替え人形の知識や思い出が皆無な人も、バービー大好きで遊びまくっていた人も、等しく楽しめる娯楽映画になっている。本作は非常に巧妙につくられた映画で、観客のバックグラウンドによって観方が異なる映画であるにもかかわらず、それぞれ異なる楽しみ方ができる重層構造をしているのだ。そこが作り手の巧みさだと私は思った。海原雄山的なうんちく満載の食マニアも、日本食は初めての外国人も、等しく満足させるような懐石料理と言えば伝わるだろうか……いや、伝わらない(笑)。
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