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特集 バーチャルリアリティ・メタバースが拓くリハビリテーション医療の可能性
慢性疼痛とバーチャルリアリティ
Virtual Reality for Chronic Pain Management
船尾 浩貴
1
Hiroki Funao
1
1三重大学大学院医学系研究科 看護学専攻実践看護学領域 成人看護学分野
キーワード:
心理社会的因子
,
気晴らし
,
恐怖-回避モデル
,
動機づけ
,
在宅訪問リハビリテーション
Keyword:
心理社会的因子
,
気晴らし
,
恐怖-回避モデル
,
動機づけ
,
在宅訪問リハビリテーション
pp.370-377
発行日 2025年4月15日
Published Date 2025/4/15
DOI https://doi.org/10.32118/cr034040370
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内容のポイント Q&A
Q1 慢性疼痛に対するバーチャルリアリティの活用とは?
慢性疼痛は患者の生活機能や社会参加に深刻な影響を与えるが,その治療法には限界がある.近年,VR(バーチャルリアリティ)の活用が注目されており,VR体験により生じる高い没入感が,患者の疼痛に対する認知を変化させることで疼痛を軽減する"気晴らし"効果をもたらすことが報告されている.運動療法やマインドフルネス等,既存の治療法への導入が進んでおり,鎮痛効果や身体機能の改善に関するエビデンスが蓄積されつつある.
Q2 慢性疼痛を有する患者の訓練におけるバーチャルリアリティの活用とは?
慢性疼痛患者に対するリハビリテーションではADL・QOLの向上を目指すことが重要となるが,痛みへの恐怖が訓練に対する制限・回避行動を招き,効果的な訓練が阻害されるという課題が生じる.VRの活用は訓練への集中や動機づけ,主体的な参加を促進する.特に慢性腰痛や頸部痛に対するVR活用の効果が報告されており,従来の方法よりも疼痛の軽減や身体機能の改善に優れ,その効果は中期的に持続することが示されている.
Q3 慢性疼痛におけるバーチャルリアリティ活用の課題は?
現時点では,VRを活用した質の高い臨床研究の数が限られており,特に長期的な効果については明らかではなく,さらなる研究が期待される.またVRデバイスの使用に伴う負担感やVR酔いに対して注意する必要があり,特に慢性疼痛患者に対しては慎重な導入が不可欠である.今後,慢性疼痛における集学的治療の一環としてVRが活用されていくためには,多職種間におけるVR活用の効果や課題の共有,評価が必要である.

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