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はじめに
半側空間無視(unilateral spatial neglect:USN)は大脳半球病巣の反対側空間に存在する刺激を検出したり,反応することが困難であり,その原因が感覚障害や運動障害自体では説明できない症状と定義されている1).
USNを検出する評価には,BIT行動性無視検査日本版(Behavioural Inattention Test:BIT)2)やthe Catherine Bergego Scale日本語版(CBS-J)3)などがある.BITは15種類の机上検査によりUSNのタイプを判別できる.しかしながら,USN症状はBITのような机上検査と日常生活動作(activities of daily living:ADL)場面とで,その発現に乖離が生じる場合があると指摘されている4, 5).CBS-JはBITと比較して良好なUSNの検出率が示されており,病態失認の評価としても有用である可能性が示唆されている6).しかしながら,CBS-Jは観察による評価のため,ある程度の臨床経験が必要なことや4),USNのタイプの判別が困難なことが難点として挙げられる7).
科学技術の進歩に伴い,バーチャルリアリティ(virtual reality:VR)技術が発展し,リハビリテーション医療分野へ応用されている.VRは「みかけや形は原物そのものではないが,本質的あるいは効果としては現実であり原物であること」と日本VR学会では定義されている.このVR技術をUSNの評価に応用することで,従来の机上検査やADLの観察のみでは検出困難なUSN症状を新たな側面から解釈することが可能となる.ADLの中でも,特に移動時を想定したUSN症状の評価は,VR技術の発展により進化を遂げている.移動時を想定したUSNの評価を開発することは,将来的に移動のADLに汎化する治療の確立につながる.
本稿では,VRの概要とVR技術を導入したリハビリテーション評価の特徴,移動時を想定したUSNに対するVR技術を用いた評価について述べる.
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