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はじめに
バーチャルリアリティー(virtual reality:仮想現実)という言葉は,1987年にLanierが「物質空間と別のもう1つの空間を合成するコンピュータ技術」を指すものとして初めて用いた。これは1990年のコンピュータ学会Siggraph会議で,1)3次元コンピュータグラフィックス,2)相互的なセンサーデバイス技術,3)高解像ディスプレイより構成される技術として定義された。わが国でも1995年にバーチャルリアリティー学会が発足し,1)臨場感,2)実時間インターアクション,3)自己投射性を3つの条件とする技術として定義された。バーチャルリアリティー技術の近年の進歩に伴い,これを広く医療全般に応用する試みがなされている。仮想現実医学の範囲は患者の形態のみならず,拡大して治療の場にまで応用されている。この応用には,手術の計画立案支援,教育支援などを目的とする手術シミュレーションシステム,術中ナビゲーション,定位脳手術への応用(シースルー技術による内部像との重ね合わせ,augumented reality),管腔外科への応用(virtual endoscopic surgery)などのほかに,患者そのものではなく患者を取り巻く環境を仮想化すること(virtual therapeutic environment)がなされ,高所恐怖症,閉所恐怖症,自閉症などの治療に応用されている。また,リハビリテーションやパーキンソン病の歩行訓練においてVRメガネが利用されている。また,通信技術と仮想現実の結合によって生み出されたtele-virtualmedicineでは遠隔制御のロボットハンドが仮想遠隔手術を行う試みもなされている。さらにはネットワーク上に病院機能を分散化,仮想化するバーチャルホスピタルの構想もある。
これらの様々な応用の中から,われわれが行っている術中ナビゲーションシステムを中心にimage-guided surgeryの将来について述べる。
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