知っておきたい! がんサポーティブケア
発熱性好中球減少症(febrile neutropenia;FN)
岩﨑 博道
1
1福井大学医学部附属病院 感染制御部
キーワード:
骨髄抑制
,
好中球減少
,
経験的治療
,
緑膿菌
,
β-ラクタム系抗菌薬
Keyword:
骨髄抑制
,
好中球減少
,
経験的治療
,
緑膿菌
,
β-ラクタム系抗菌薬
pp.318-322
発行日 2025年3月15日
Published Date 2025/3/15
DOI https://doi.org/10.32118/cr034030318
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好中球減少をはじめとする有害事象は抗がん剤,分子標的薬および放射線によるがん治療後にみられる骨髄抑制に起因する.骨髄は骨の中にある造血組織で,血液の細胞成分である白血球,赤血球および血小板を産生し末梢血に供給している.骨髄中の成熟血液細胞を産生する未分化な幹細胞が,がん治療による成熟障害を受けると各種の血液成分の末梢血への供給が低下する.抗がん剤は本来,分裂・増殖の盛んながん細胞に作用し死滅させることを目的としているが,同様に分裂・増殖する骨髄の正常造血細胞にも作用してしまうため骨髄抑制が引き起こされる.抗がん剤は微量であっても骨髄の幹細胞の成熟障害を誘導する.分子標的薬は種類によって作用が異なるが,骨髄抑制を生じるものがある.放射線治療では,照射される部位や照射量によって,その部分の骨髄に一時的に骨髄抑制がみられることがある.
さまざまながん治療後の骨髄抑制によって生じる症状は,どの血液成分が障害を受けたかによっても異なる.吐き気・嘔吐や,見た目にもはっきりと症状が現れる脱毛等の副作用とは異なり,軽度の赤血球減少,血小板減少および白血球(好中球)減少では自覚症状が少ない点に注意を要する.血球減少が強度になると,それぞれ貧血,出血ならびに感染症を併発し,ときに重篤化し死に至ることもある.本稿では好中球減少に焦点を絞り,悪性腫瘍患者に合併する発熱性好中球減少(febrile neutropenia;FN)と,その対応について概説する.

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