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内容のポイント Q&A
Q1 多系統萎縮症の嚥下障害の出現時期,誤嚥は?
多系統萎縮症(multiple system atrophy;MSA)では他のαシヌクレイノパチーであるレビー小体病に比べて嚥下障害の出現時期が早く,運動機能障害の発現から5年以内に臨床的に明らかになるとされ,3年以内の重度の嚥下障害はMDS-MSA診断基準の支持的運動所見に明記されている.また,病初期に嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査を行うことで,臨床的に明らかになる前に誤嚥を認め,自覚症状と内視鏡的検査所見がしばしば乖離することがある.
Q2 多系統萎縮症の嚥下障害のパターンは?
疾患の進行とともに嚥下の4段階(準備期,口腔期,咽頭期,食道期)すべてにおいて障害を認める.口腔期では咽頭への食塊輸送の遅れや舌根部の不十分な動きがみられ,咽頭期では喉頭の前方挙上移動の遅れ,咽頭収縮不全,喉頭蓋谷および梨状窩における残留を認める.食道期では食道運動低下と食物停滞,上部食道括約筋圧の上昇や嚥下時の協調運動不全等,幅広い障害パターンをさまざまな程度で認める.
Q3 嚥下の評価方法は?
まずは問診(食形態やむせ等),認知機能や言語の評価,口腔機能を評価する.その後スクリーニング検査として反復唾液嚥下試験や水飲み試験等を実施する.診断的評価としては嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査,マノメトリー検査を行う.問診票によるスクリーニングでは,疾患早期の嚥下障害が過小評価される可能性があり注意が必要である.摂食嚥下障害臨床的重症度分類(dysphagia severity scale;DSS)は嚥下機能を簡便に7段階評価でき,分類に応じた安全な食形態と訓練の介入が可能である.
Q4 嚥下障害と臨床スコア,予後との関係とは?
MSAの嚥下障害は予後に影響する.特に早期の自律神経不全と重度の嚥下障害を認める症例では全生存期間が短い.DSSはUMSARS(unified MSA rating scale)や罹病期間と相関し,進行や重症度の指標になっている可能性があるが,UMSARSの嚥下項目には食形態や嚥下方法等が反映されておらず,内視鏡的検査所見との乖離がみられる.また,DSSが髄液5-HIAA(5-hydroxyindole acetic acid)と相関し,SSRI(selective serotonin reuptake inhibitor)の使用により累積生存率に有意差がみられたという報告がある.
Q5 嚥下障害に対するリハビリテーションや治療とは?
詳細な評価に基づく食形態の調整,嚥下姿勢の指導のもと,経口摂取リハビリテーションを行う.疾患の進行とともに嚥下障害が悪化するため,定期的に評価が必要である.重度の嚥下障害,それに伴う栄養障害に対しては経皮内視鏡的胃瘻造設術が適応となる.唾液誤嚥で繰り返す誤嚥性肺炎を認める場合は喉頭気管分離術が選択肢となる.上部消化管括約筋(輪状咽頭筋)のジストニアを認める場合はボツリヌス療法が行われることもある.

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