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はじめに
義足のリハビリテーション(以下リハ)を取り巻く環境は近年大きく様変わりした.末梢循環障害に起因した高齢下肢切断の増加に伴い,リハ対象者の大半が高齢者である.したがって,糖尿病や動脈硬化に起因するさまざまな併存疾患への対応も同時に必要である.一方では,テクノロジーの進歩により高性能(同時に高額)な義足パーツ,特に膝継手が臨床の場で利用可能である.その結果,青壮年で身体機能のよい切断者にとってはこれまでにないような素晴らしい歩行機能を再獲得する可能性が広がったといえる.
しかし,体力に多くの問題点を抱える高齢切断者が圧倒的多数を占めているという現実がある.青壮年で身体機能がよい切断者が減っている一方で,次々と高性能義足が出現する,あたかも矛盾しているかのような状況が存在する.これこそが,今われわれが直面している現実である.身体機能がよい切断者が高機能義足を用いたリハにより素晴らしく歩けるようになる一方で,高齢で虚弱な切断者は,いわゆる低活動用義足を用いたリハで必要最小限の歩行を目指すこととなる.まさに,義足リハの二極化現象であり,特に大腿切断といった高位切断における膝継手の選択は切断者の機能を大きく左右する.したがって,今までの義足リハとは比較にならないほどの多様な対応が臨床現場に求められている.適切な訓練用仮義足を用いたリハが重要といわれる所以である.しかしながら,現状では訓練用仮義足を治療用として臨床で使用するには価格による制限を受けざるを得ない.つまり,高額な高機能義足は治療用の訓練用仮義足としての適用が困難である.このことについてしっかりと事前に心にとどめておくべきである.
本稿では,高機能義足を必要とする切断者に対して,訓練用仮義足の選択はどうあるべきかについて自験例に基づいて記したい.
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