Lecture
運動器再生医療における脂肪由来幹細胞の潜在能力
林 克洋
1
,
菅沼 省吾
1
,
野村 一世
1
,
黒田 一成
1
,
虎谷 達洋
1
,
方 向
1
,
土屋 弘行
1
Katsuhiro HAYASHI
1
,
Seigo SUGANUMA
1
,
Issei NOMURA
1
,
Kazunari KURODA
1
,
Tatsuhiro TORATANI
1
,
Xiang FANG
1
,
Hiroyuki TSUCHIYA
1
1金沢大学附属病院整形外科
1Department of Orthopaedic Surgery, Kanazawa University Hospital
キーワード:
再生医療
,
regenerative medicine
,
幹細胞
,
stem cell
Keyword:
再生医療
,
regenerative medicine
,
幹細胞
,
stem cell
pp.635-639
発行日 2016年7月25日
Published Date 2016/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408200578
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
脂肪組織は体重の2割前後を占め,主な役割はエネルギーの貯蔵や物理的衝撃のクッション作用などである.われわれも手術の際に必ず目にする,ありふれた組織であるが,整形外科手術としての利用価値は,骨端線閉鎖に対するLangenskiold手術などに散見されるのみである.一見あまり利用価値のないような脂肪組織であるが,その中には脂肪,軟骨,骨,骨格筋などに分化誘導可能な細胞があり,脂肪由来幹細胞と呼ばれている.骨髄から採取される骨髄間葉系幹細胞と同等な再生能力を有することで,運動器再生医療にもさまざまな応用が試みられ,現在注目されている.例えば,米国では変形性膝関節症に対する脂肪由来幹細胞の移植臨床試験が行われており,わが国でもさまざまな臨床試験がすでに始まっている.今後,実際の治療に使用されるのも遠い先ではないと思われる.実験レベルでいえば,骨再生,軟骨再生,半月板再生,神経再生1-3)などのように整形外科疾患のあらゆる範囲をカバーしているといって過言ではない.
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.