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はじめに
このシリーズでは,働く世代(就労者)の健康増進をめざすうえで,業務遂行パフォーマンス向上をトリガーとするアプローチを展開しています.脳機能に必要な主な栄養素は,アミノ酸であるトリプトファンとチロシン,ビタミン,ミネラル,リン脂質,n-3系脂肪酸などがあげられます(表1).しかし,これらをバランスよく毎食摂取することは容易ではありません.「令和5年国民健康・栄養調査」によると,ビタミンDの摂取量平均値は6.2±7.6μgですが地域差があります(図1)1).また,ミネラルは食事からバランスよく必要量を摂取することがむずかしい栄養素です.しかも,飲酒はビタミンB群,ビタミンD,亜鉛やマグネシウムなどの吸収阻害やアルコール分解時の消費による不足を生じさせます2).さらに,サプリメントを食事に置き換えている人も多いでしょうが,サプリメントに関する適切な情報の選別がむずかしく自己流の栄養補充に陥りがちなので適切なアドバイスが求められます.とくにミネラルの単種のみを意識した摂取はリスクをともないます.たとえば,亜鉛のみをサプリメントで過剰摂取すると銅の吸収阻害や神経障害などの健康障害を生じさせることを伝える必要があります.
たんぱく質に関しては,「夕食で焼肉をたくさん食べるからランチは何も食べない」,「夕食で卵,魚,肉,豆腐などたんぱく質豊富な食事を多くとっているから,昼食ではおにぎりだけで問題ない」など,1食でたくさんのたんぱく質を摂取すればよいなどと誤解されていることがよく見受けられます.たんぱく質を過剰摂取し相対的に糖質量が減少した場合には,脳機能の低下を招きます.一方,たんぱく質の摂取時刻と体内時計には密接な関係があり,摂取時刻が骨格筋量増加と関係していることや,昼食時のたんぱく質摂取が夕食後の高血糖を抑制する可能性があることが報告されています3).1日に必要なたんぱく質量については厚生労働省による「日本の食事摂取基準(2025年)」に性別,年齢別にみた推奨量(g/日)や目標量(%エネルギー)が示されています.たんぱく質は体内に貯蔵臓器がないため,午後の脳機能を維持するためには各自の必要量を3食に分けて摂取する必要があります.
忙しい就労者にとってこうした健康指導が負担に受け止められないよう,制約の多い勤務時間中でも取り組める現実的な健康アドバイスを提示します.

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