- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
食品のポーションサイズ(一回の食事で摂取する量)は,食事の総摂取量を決定する主要因である1,2).ポーションサイズの推定のために,食品写真やフードモデルなど多様なツールが開発されてきた3).そのなかでも「手ばかり」は,自分の手(こぶしや手のひらなど)を単位として食品のポーションサイズを表す方法である.手ばかりは,栄養士,研究者,公衆衛生機関が一般の人々へ適切な分量を伝える手段として世界各国で広く活用されてきた4-9).たとえば,イギリスの「ファイブ・ア・デイ」キャンペーンでは,果物・野菜を1日5ポーション摂取するよう推奨し,「1ポーションは手のひらに収まる量」と説明している4).また,南アフリカ共和国のある病院では,慢性腎臓病患者に対し「肉,鶏肉,魚は手のひら一枚分で約90 gに相当する」と指導している5).
手ばかりは,シンプルで理解しやすく,特別な道具が不要なため,インターネット接続や費用などのリソースが限られる現場でも活用できる10-13).また,手の大きさは身長と相関することが示されている14).このため,手ばかりで示した食品量は,個人の体格差にともなうエネルギー必要量の違いを反映したものと考えられる15).
一方,一般の人々を対象として「手ばかりに基づく推定値(手のひらやこぶしの数)」と「実際の食品重量(g)」の関連を検証した研究は少ない6).既存の研究はサンプルサイズが小さく,対象食品群も限定的である.加えて,研究施設やクリニックといった管理された環境での実施が多く,実生活における食事評価への一般化には課題が残る6,13,15-18).
そこで,筆者らの研究グループは,一般成人の通常の食事を対象に,手ばかりによる申告量と実測重量の関連を検証した19).さらに,申告量から摂取重量を推定する予測式(回帰モデル)を作成し,その性能と実用性を評価した.本稿では,研究方法と結果を紹介し,手ばかりの有用性と今後の応用可能性について考察する.

Copyright © 2026 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.

