- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
食事管理アプリと体重管理
食事管理アプリケーション(以下,食事管理アプリ)は,近年,ダイエットや健康意識の高まりと利便性から利用者が急増している.食事管理アプリはスマホやPCなどで利用が可能で,品目の入力だけでなく,食事の写真や市販食品のバーコードを撮るだけでも記録できるなど,リアルタイムの食事記録を手軽に行えることが魅力の1つである.また,記録した食事の栄養量を計算する機能,目標設定との差異を評価するアドバイス機能などが追加されたものも開発されている.一般に使用される食事管理アプリの多くは健常者を対象としており,特定疾患に対応した行動学的に検証されたものはいまだ存在しないのが現状である1).
リアルタイムの食事記録は,減量強化のための戦略の一つであり,記録の継続は体重減少と関連している2).食事管理アプリは,食事の追跡をより容易にし減量を成功へと導く可能性がある3).しかしEysenbachの検討では,食事管理アプリを使用した場合でもセルフモニタリングのアドヒアランスの低下を防ぐことはむずかしいと報告されており,多くのデジタルヘルス介入では脱落者が多い4)ことに課題がある.また,食事管理アプリを活用したセルフモニタリングでは,エネルギー摂取量の自己申告の妥当性は向上しないといった報告もある5).Torreらによると,人は面接者に促されないかぎり,アルコールを含む嗜好飲料や制限している食品(高脂肪/高糖質)摂取の報告を容易に忘れてしまうと述べている6).つまり,意図的な過少報告は,改善が困難である.一方,意図的でない場合でも申告誤差は生じる.米国の食事管理検証研究のメタアナリシスでは,食事管理アプリは従来の食事評価法と比較して食品摂取量を過小評価しているという結果であった.Iizukaらは,日本でよく使用されている食事管理アプリを使用し入力した試験食(コンビニ食)と病院食の栄養成分を比較したところ,病院食の栄養成分は実際の値より1.5倍高かったと報告している7).コンビニ食に比べ病院食は脂質を制限するように調整されており,食事管理アプリに搭載されたメニューでは食事の種類によって精度にばらつきが生じていた可能性がある.一方で減量を目的とした場合では,食事管理アプリの正確さは,セルフモニタリングの頻度やアドヒアランスほど重要ではないといった報告があり8),食事管理アプリを活用する場合,正確さに焦点を当てるよりも,セルフモニタリングの頻度を高めるための入力負担を減らす工夫を検討することが重要かもしれない.
Copyright © 2024 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.