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第1土曜特集 エピゲノム編集の進歩と医療応用への道
エピゲノム遺伝子治療の現状と新規ベクター開発の可能性
Current status of epigenome gene therapy and the development of new viral vector
谷 憲三朗
1
Kenzaburo TANI
1
1東京大学医科学研究所招聘講師
キーワード:
遺伝子治療
,
CRISPR-dCas9
,
CRISPRi/CRISPRa
,
麻疹ウイルス(MV)ベクター
Keyword:
遺伝子治療
,
CRISPR-dCas9
,
CRISPRi/CRISPRa
,
麻疹ウイルス(MV)ベクター
pp.413-420
発行日 2025年11月1日
Published Date 2025/11/1
DOI https://doi.org/10.32118/ayu295050413
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エピゲノム編集技術はCRISPR-dCas9を基盤として急速に発展しており,遺伝性疾患に対する新たな治療法として確立される可能性を秘めている.また,単一遺伝性疾患に限らず,がん,神経疾患,老化など広範な疾患領域への応用が期待される技術でもある.現在までに,体外治療への応用では,輸血依存性β-サラセミアや鎌状赤血球症(SCD)に対するエクサセル(Casgevy)が評価されている.非翻訳領域ゲノム内の特定遺伝子調節部位を標的とする治療法開発の有効性を示せたことは意義深く,同様にDNA配列の変更を必要としない疾患に対するエピゲノム編集技術の活用可能性を強く支持するものである.また,CAR-T細胞療法においても,CRISPRiやCRISPRaを用いた遺伝子発現の微調整により,T細胞の効力増強や持続性向上が期待されている.体内治療への応用では,ハプロ不全症に対するCRISPRaによる内因性遺伝子活性化や,X連鎖性疾患(脆弱X症候群,レット症候群など)に対するCas9-TET1を用いた脱メチル化による遺伝子発現回復が実証されている.エピゲノム編集技術の臨床応用における大きな課題は遺伝子導入技術である.筆者らはこれまで,麻疹ウイルス(MV)ベクターを新たに開発してきた.MVベクターは,複数遺伝子の搭載が可能であること,一過性の遺伝子発現が得られること,エンベロープタンパクの遺伝子改変により臓器標的化が可能であることを背景に,エピゲノム編集を含む遺伝子治療において広い応用が期待される.

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