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特集 “All You Need is Synapse” シナプスを標的とした創薬に向けて
シナプスを機能的に増強する
-――記憶障害治療への新たな可能性
Functionally enhancing synaptic connections
――New possibilities for treating memory disorders
廣内 大成
1
,
林 康紀
1
Taisei HIROUCHI
1
,
Yasunori HAYASHI
1
1京都大学大学院医学研究科システム神経薬理学分野
キーワード:
シナプス可塑性
,
長期増強現象(LTP)
,
光遺伝学
,
エングラム細胞
Keyword:
シナプス可塑性
,
長期増強現象(LTP)
,
光遺伝学
,
エングラム細胞
pp.117-122
発行日 2025年10月11日
Published Date 2025/10/11
DOI https://doi.org/10.32118/ayu295020117
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記憶障害は認知症の主要症状であり,その治療には記憶の形成・固定化・想起のメカニズム理解が不可欠である.近年,光遺伝学的手法によりシナプスのつながりを人為的に操作する技術が開発され,長期増強現象(LTP)といったシナプス可塑性が記憶プロセスに深く関与することが明らかとなった.また,こうした技術を活用することで,アルツハイマー病モデルマウスにおいて記憶想起機能を回復できることが報告されたほか,記憶形成・固定化過程においても,シナプスのつながりの機能的な増強が重要であることが示された.最近では,LTPの分子メカニズムに着目することで,神経細胞レベルから単一シナプスレベルでの可塑性操作も可能となりつつある.臨床応用には現状多くの課題が残るものの,シナプス可塑性を標的とした記憶操作技術は,記憶障害の革新的治療戦略となりうることが期待される.

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