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特集 “All You Need is Synapse” シナプスを標的とした創薬に向けて
自閉スペクトラム症とシナプス異常
Autism spectrum disorder and synaptic abnormalities
内匠 透
1
Toru TAKUMI
1
1神戸大学大学院医学研究科生理学・細胞生物学講座生理学分野
キーワード:
自閉スペクトラム症(ASD)
,
シナプス
,
マウスモデル
Keyword:
自閉スペクトラム症(ASD)
,
シナプス
,
マウスモデル
pp.113-116
発行日 2025年10月11日
Published Date 2025/10/11
DOI https://doi.org/10.32118/ayu295020113
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自閉スペクトラム症(ASD)は,社会的コミュニケーションの障害,限定された興味や反復的行動を主な特徴とする神経発達症であり,乳幼児期から発症する1).ASDは “スペクトラム” という名称が示すように,その症状の現れ方や重症度は極めて多様である.これには言語発達の有無や知的能力の違い,共通する行動パターンの有無などが含まれ,個別の診断や支援のあり方が求められる所以である.ASDの有病率は幾何級数的に増加しており,近年の疫学研究では,先進諸国における小児の有病率は1~2%と報告され,米国疾病予防管理センター(CDC)からは31人に1人という最新の報告がでている2).この増加傾向は,診断基準の改訂やスクリーニング技術の向上に由来する側面もあるが,環境因子や生活習慣の変化も影響を与えている可能性が指摘されている.かつては養育環境や心理的要因が主たる原因と考えられていたが,現在では脳の発達過程における神経回路形成の異常が主要因という脳の発達障害であると考えられている.特に,神経細胞同士をつなぐ “シナプス” の異常,すなわち “シナプス病(synaptopathy)” としてのASD像が現在注目されているが,筆者は約20年前に提唱していた3).本稿ではASDとシナプス異常の関係について,分子,細胞,神経回路,行動の各レベルを総合的に考察し,近年の研究動向と今後の課題を明らかにする.

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