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自閉症(autism)とは,1943年に米国の児童精神科医Leo KannarやHans Aspergerが使いはじめた言葉で,当初は統合失調症様の陰性症状が低年齢で出現することを指した言葉であった.今日では,自閉症は自閉スペクトラム症(ASD)とよばれる連続体として,①社会的な相互交渉の質的障害,②言語などによるコミュニケーションの質的障害,③興味の限局と反復的で常同的な様式の3つの核となる行動的特徴を基準にする脳の発達障害と定義され,特徴的な症状により幼年時に診断される1,2).典型的かつ広範なASDの発症率は150人に1人との報告があるが3),病態の認知とともに年々発症率(診断率)は増え,社会的に大きな問題になっている.ASDの病態発症機序は神経回路の異常と考えられ,本来は胎生期から出産後数年にわたり起こるシナプスの “刈り込み(pruning)” が不十分で神経ネットワークの取捨選択による成熟がなされず発症する4).神経の刈り込みには中枢神経系内の貪食細胞であるミクログリアとともに補体系もオプソニン効果の発現により関与すると想定される.そのため,ミクログリアや補体系の異常はASD発症の原因となりうる.発症には遺伝的要因と同等に環境要因が重要とされる5).たとえば,妊娠中の母体の免疫異常がサイトカイン血症を介して胎児脳内のミクログリアの異常を介して刈り込み異常を惹起するMIA(maternal immune activation)仮説が注目される.本稿では,ASDの遺伝的・環境的発症要因について概説するとともに,全身性エリテマトーデス(SLE)や不育症患者で高頻度に認められるC1qに対する自己抗体がASD発症に関与する可能性について説明する.
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