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第5土曜特集 止血・血栓・凝固の最新知見――研究と臨床を繋ぐ
疾患・治療に伴う凝固異常
CAR-T細胞療法に伴う凝固異常
Coagulopathy related to CAR-T cell therapy
新井 康之
1
Yasuyuki ARAI
1
1京都大学医学部附属病院検査部・細胞療法科・血液内科
キーワード:
キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞
,
プラスミノーゲン活性化インヒビター1(PAI-1)
,
凝固障害
,
フィブリノーゲン
Keyword:
キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞
,
プラスミノーゲン活性化インヒビター1(PAI-1)
,
凝固障害
,
フィブリノーゲン
pp.842-847
発行日 2025年8月30日
Published Date 2025/8/30
DOI https://doi.org/10.32118/ayu294090842
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キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法は一部のB細胞腫瘍に対して高い抗腫瘍効果を示すため,標準治療に位置づけられるようになった.一方で,本治療特有の有害事象として,サイトカイン放出症候群(CRS)などが頻繁に観察される.CRSの典型的な臨床症状として,高熱,血圧低下,低酸素血症,血管透過性亢進が知られているが,これらの典型的な症状に加えて “凝固異常” が合併することがある.これまでの検討で,CRSに伴うIL-6の増加が血管内皮からのプラスミノーゲン活性化インヒビター1(PAI-1)の産生を促し,線溶抑制・凝固亢進状態となり,消耗性にフィブリノーゲンが低下することが示唆されている.CAR-T細胞療法初期には凝固系の絶え間ないモニタリングを行うとともに,重症CRSが予想される症例に対しては,低フィブリノーゲン血症に備えて,新鮮凍結血漿(FFP)やその濃縮製剤であるクリオプレシピテートの十分な準備が必要である.

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