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第5土曜特集 止血・血栓・凝固の最新知見――研究と臨床を繋ぐ
疾患・治療に伴う凝固異常
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連凝固異常と血栓症
COVID-19 associated coagulopathy and thrombosis
石倉 宏恭
1,2
Hiroyasu ISHIKURA
1,2
1洛和会音羽病院 病院顧問(救急医療担当)
2同救急集中治療センター 所長
キーワード:
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
,
凝固異常
,
血栓
,
血栓形成機序
,
血栓症予防
Keyword:
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
,
凝固異常
,
血栓
,
血栓形成機序
,
血栓症予防
pp.848-854
発行日 2025年8月30日
Published Date 2025/8/30
DOI https://doi.org/10.32118/ayu294090848
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今さら言うまでもないが,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は呼吸器疾患である.しかし,2020年初頭のパンデミック当初からCOVID-19患者における血栓症の発症リスクが著しく高いことが報告されていた.COVID-19の原因ウイルスである新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は,肺胞上皮細胞のみならず血管内皮細胞や免疫細胞に直接侵入し,これら細胞の活性化や調節障害を引き起こし,その結果,血管内皮細胞障害や免疫調節障害(サイトカインストーム)が生じる.これにより,血小板や凝固系が活性化して血小板血栓やフィブリン血栓が加速度的に形成される.検査所見では,COVID-19患者の約45%でD-dimerの異常高値を認め,D-dimerの上昇は患者の予後不良と相関している.その他,フィブリノーゲン,凝固第Ⅷ因子(FⅧ),フォン・ヴィレブランド因子(VWF)が上昇する.一方,血小板数,プロトロンビン時間(PT)および活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT),アンチトロンビン活性値はおおむね正常範囲内にとどまることが多い.COVID-19患者に対する血栓症予防は病態が重症化すればするほど重要であり,日本で公表された「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における血栓症予防および抗凝固療法の診療指針」(2023年2月25日版version 4.1)に準じて実施しなければならない.

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