Japanese
English
第5土曜特集 止血・血栓・凝固の最新知見――研究と臨床を繋ぐ
疾患・治療に伴う凝固異常
がん関連血栓症
-――がん治療関連血栓症の一次予防
Cancer-associated thrombosis
――Primary prevention of cancer therapy-associated thrombosis
向井 幹夫
1
Mikio MUKAI
1
1大阪がん循環器病予防センター 副所長
キーワード:
がん関連血栓症
,
がん治療関連血栓症(CTAT)
,
予防的抗凝固療法
,
直接経口抗凝固薬(DOAC)
,
Khoranaスコア
Keyword:
がん関連血栓症
,
がん治療関連血栓症(CTAT)
,
予防的抗凝固療法
,
直接経口抗凝固薬(DOAC)
,
Khoranaスコア
pp.808-812
発行日 2025年8月30日
Published Date 2025/8/30
DOI https://doi.org/10.32118/ayu294090808
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
静脈血栓塞栓症(VTE)はがん診療において最も重要な心血管合併症のひとつであり,がん患者の生命予後のみならず,がん治療戦略にも大きく影響する.また,がん治療の進歩により新しく開発された分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などによるがん治療関連血栓症(CTAT)の頻度が急速に増加しており,そのコントロールが重要となっている.血栓症の診断は臨床症状の有無で行うが,無症候性の症例も多く,診断が困難な場合がある.一方で,血栓症を発症するとがん治療が中断し,肺動脈血栓塞栓症を発症し,死亡に至る症例も少なくない.そこで,がん治療を開始する前に血栓症の発症リスクを層別化し,発症リスクが高い症例では予防的抗凝固療法を考慮する.新しく改訂されたわが国のガイドラインでも,活動性がん症例に対する血栓症の一次予防に関する記載が追加され,ハイリスク症例に対しては出血リスクを十分検討したうえで,限定的ではあるが,予防的抗凝固療法の必要性について言及されている.今後,新たな抗がん剤の開発に伴い,さらに増加するであろうがん関連血栓症からがん患者を守る立場で一次予防が正しく施行され,がん治療の継続と適正化がなされることが期待される.

Copyright © 2025 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.