連載 ケースから学ぶ臨床倫理推論・14
判断能力の低下が疑われる患者の意向
勝碕 静香
1
Shizuka KATSUZAKI
1
1東京大学医学部附属病院患者相談・臨床倫理センター
キーワード:
判断能力と同意能力
,
自律尊重
,
MacCAT-T
,
無益性
Keyword:
判断能力と同意能力
,
自律尊重
,
MacCAT-T
,
無益性
pp.1239-1241
発行日 2025年6月28日
Published Date 2025/6/28
DOI https://doi.org/10.32118/ayu293131239
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Case 一時的な判断能力低下の可能性がある場合
患者Aは85歳の男性で,高血圧と糖尿病を長年患っており,最近大腸癌と診断された.担当のB医師は,年齢と合併症を考慮すると手術のリスクは比較的高いが,手術を行わない場合は余命が確実に短くなると考えている.患者Aは手術目的で地域の総合病院に入院した.
入院時,看護師のオリエンテーションの際には,「手術をしたほうが長生きできると聞いたから,受けることにした」と話し,息子のC氏も「父親はできるだけ長く生きたいと普段から話していたし,リスクについても理解したうえで手術をしたいと考えていると思います」と話していた.
手術前日,B医師が病棟に行くと看護師から「昨夜,せん妄状態になったAさんが,もう何もしないで死なせてくれと言っていました.本当に手術をしていいのでしょうか」と相談された.B医師はどのように考えたらよいだろうか.

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