連載 ケースから学ぶ臨床倫理推論・18
家族の意向が患者の治療方針に影響を及ぼすケース
瀬戸山 晃一
1
Koichi SETOYAMA
1
1京都府立医科大学大学院医学生命倫理学(医学科人文社会科学教室)
キーワード:
協働的意思決定(SDM)
,
パターナリズム
,
ナラティヴ
Keyword:
協働的意思決定(SDM)
,
パターナリズム
,
ナラティヴ
pp.528-533
発行日 2025年8月16日
Published Date 2025/8/16
DOI https://doi.org/10.32118/ayu294060528
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Case 未破裂動脈瘤手術と胃瘻造設の患者家族間で異なるナラティヴ
日常生活に支障がでる健康上の問題は特になくすごしている70代の男性Aは,息子に勧められて人間ドックを受けたところ,破裂してもおかしくはない大きさの未破裂大動脈瘤が発見された.手術をすれば致命的な大動脈破裂による急死は避けられる.しかし,動脈瘤が存在する部位の手術は高いリスクを伴うことが想定され,手術が成功しても半身麻痺等手術の後遺症が残る危険性が高い状態であった.そのため医師は,インフォームド・コンセント(IC)において,破裂すると救命はほぼ期待できず致死的である動脈瘤が見つかったこと,それを回避するための手術のリスクも含めて,本人と70代の妻Bに告知した.AとBは大変大きなショックを受け,手術をするかどうかの判断が迫られたがすぐには決められない様子であった.家族でしばらく考える時間が欲しいと言って夫婦は帰宅した.

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