Japanese
English
第5土曜特集 マルチオミクスが解き明かす疾患の本質――統合的アプローチによる新たな知見
疾患別マルチオミクス解析の最新動向
【免疫・感染症】
顎関節症の謎を紐解く
-――統合解析という突破口
Unraveling the enigma of temporomandibular joint disorders
――New insights from integrated analysis
矢野 文子
1,2
Fumiko YANO
1,2
1昭和医科大学歯学部口腔生化学講座
2同統括研究推進センター
キーワード:
顎関節症(TMD)
,
Xenium in situ
,
変形性顎関節症マウスモデル
Keyword:
顎関節症(TMD)
,
Xenium in situ
,
変形性顎関節症マウスモデル
pp.890-895
発行日 2025年5月31日
Published Date 2025/5/31
DOI https://doi.org/10.32118/ayu293090890
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
本研究では,顎関節症(TMD)の病態を統合的に解明するため,シングルセルRNA解析(scRNA-seq)と空間トランスクリプトーム解析(Xenium in situ)を用いた統合解析を実施した.メカニカルストレス(MS)モデルと関節円板前方移動(ADD)モデルを構築し,それぞれの滑膜の病態変化を詳細に解析した結果,17種類の細胞タイプと24の細胞クラスターを同定した.特に線維芽細胞が内皮細胞やマクロファージとクロストークを持つことが示され,Notchシグナルが病態進行に関与している可能性が示唆された.さらに,統合解析により滑膜後部における細胞動態の空間的変化を捉え,MSおよびADDモデルで滑膜恒常性が破綻する様子が明らかになった.この統合アプローチは,滑膜-軟骨関連疾患の理解と新たな治療標的の探索に重要な知見を提供するものである.

Copyright © 2025 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.