臨床メモ
顎関節症
中久木 大見
1
1東大分院口腔外科
pp.302
発行日 1971年3月10日
Published Date 1971/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203534
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顎関節はその運動が複雑で,摂食時にたえず強圧を受け,一生の中で最も長時間働き続ける関節であり,一方顎筋は,咀嚼,談話の他,精神的興奮に鋭敏に反応し,はぎしり,かみしめなどを誘発し顎関節を刺激している.またその位置的関係もあって顎関節疾患患者は,早期治癒をあせり,医師の処置に対し不安,焦慮に陥りやすく,このような精神状態が,さらに症状を悪化させることが多い.
顎関節症は,「その症状の主体が顎関節に存在し,顎運動にさいし,同部の疼痛,雑音,開口障害などの症状を伴う複雑な症候群で,非感染性のもの」をいい,30-40歳の女性に多く(男女比=1:3),左側に多い.病因説として,(1)過蓋咬合あるいは咬合干渉,(2)顎関節の過動性,(3)咀嚼筋の不調和な緊張などが考えられている.一般には,種々の原因(たとえば歯の欠損,歯の動揺,不適合補綴物など)による咬合異常は,顎関節に外傷的に働き得るが,難聴,耳鳴,頭痛を伴う場合は,耳疾患を一応精査すべきで,また臼歯部の齲蝕,歯髄炎,歯膜炎の関連痛としての顎関節痛もあるので,口腔内の精査も必要である.これらの検査で疑わしいものは処置が先決である.
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