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第5土曜特集 マルチオミクスが解き明かす疾患の本質――統合的アプローチによる新たな知見
疾患別マルチオミクス解析の最新動向
【がん】
マルチオミクス解析による血液がんの病態解明と臨床への展開
Elucidation of the pathogenesis of blood cancers and clinical applications through multi-omics analysis
亀田 拓郎
1
,
下田 和哉
1
Takuro KAMEDA
1
,
Kazuya SHIMODA
1
1宮崎大学医学部内科学講座血液・糖尿病・内分泌内科学分野
キーワード:
マルチオミクス解析
,
成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)
,
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)
,
個別化医療
Keyword:
マルチオミクス解析
,
成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)
,
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)
,
個別化医療
pp.804-810
発行日 2025年5月31日
Published Date 2025/5/31
DOI https://doi.org/10.32118/ayu293090804
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マルチオミクス解析の進歩により,血液がんの分子病態の全体像が明らかになってきた.本稿では,ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染に起因する成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)を例に,ゲノム,エピゲノム,トランスクリプトームなど複数階層の統合的解析による知見を概説する.ゲノム解析からはTCR/NF-κB経路の遺伝子を中心とした体細胞異常の全貌が,シングルセル解析からは腫瘍細胞のクローン進化や遺伝子発現の多様性が明らかになった.また,HTLV-1キャリアの段階から生じるDNAメチル化やヒストンメチル化などのエピゲノム異常が病態進展に関与することも判明した.さらに,腫瘍細胞と非腫瘍細胞(微小環境細胞)をあわせたシングルセル解析により,腫瘍細胞と非腫瘍細胞との相互作用も解明されてきた.これらの知見は新たな予後予測モデルの構築や分子標的薬の開発,耐性機序の解明などに応用され,個別化医療の実現に向けた取り組みにつながっている.

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