FORUM 司法精神医学への招待――精神医学と法律の接点・Vol.1
現代社会と司法精神医学
-――司法精神医学のパラダイムシフト
五十嵐 禎人
1
Yoshito IGARASHI
1
1千葉大学社会精神保健教育研究センター法システム研究部門
pp.193-198
発行日 2025年4月12日
Published Date 2025/4/12
DOI https://doi.org/10.32118/ayu293020193
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
司法精神医学と社会
精神医学は他の医学分野と比較して法との関係が深い.「司法精神医学(forensic psychiatry)」とは,精神障害に関連する法的な諸問題を取り扱う応用精神医学の一分野である.法とは,「社会秩序維持のための規範で,一般に国家権力による強制を伴うもの」1)である.法の具体的内容やその適用は,常に不変というわけではなく,社会一般の規範意識の変化に伴って変化することがある.精神医学は,異常な精神現象である精神障害の解明や治療の方策を探索する学問である.精神障害の解明が進むことによって精神障害の内容や治療は変化するが,ICD-10の性同一性障害が,ICD-11では性別不合として精神障害から外されたように,社会一般の価値観の変化に応じて精神障害の内容が変化することもある.

Copyright © 2025 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.