新しい精神保健福祉法と病院の対応・6
司法精神医学の視点から
山上 皓
1
1東京医科歯科大学難治疾患研究所社会医学研究部門(犯罪精神医学)
pp.988-991
発行日 1996年10月1日
Published Date 1996/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901943
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欧米の多くの国の精神保健法は,触法精神障害者に対して司法および医療双方の要請を配慮した適切な処遇をなし得るように,刑法・刑事訴訟法の規定と密接かつ有機的に関連する諸規定を有している.わが国の精神保健法にはもともとそれがないうえ,今回の法改正でもその点への配慮は全くなされておらず,その意味では新しい精神保健福祉法に,司法精神医学の視点からみて評価すべきものはない.
現行の規定の中で精神障害者の触法行為と関連の深いものとして措置入院制度に関するものがあるが,これについては今回,従来の公費優先から保険優先へと重大な政策変更がなされた.措置入院制度がこれまで負ってきた保安的な側面を払拭し,医療上の措置として純化するという意味においては,それなりに意味を持ちうる変更かも知れない.しかし,そうであるとすれば,国は一方において,毎年1,000人前後生じている触法精神障害者の処遇問題に関し,何らかの責任ある制度を用意する必要があるであろう.
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