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特集 新規がん免疫療法としてのT-cell engagerの進歩と可能性
固形腫瘍におけるT-cell engagerの開発状況
Development status of T-cell engager in solid tumors
佐藤 潤
1
Jun SATO
1
1国立がん研究センター中央病院先端医療科
キーワード:
二重特異抗体
,
T-cell engager
,
二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE)
Keyword:
二重特異抗体
,
T-cell engager
,
二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE)
pp.502-505
発行日 2024年8月17日
Published Date 2024/8/17
DOI https://doi.org/10.32118/ayu290060502
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固形がんの治療における新たな展開として,T-cell engager(T細胞誘導抗体)の開発が注目されている.免疫細胞を誘導して腫瘍に対する免疫反応を活性化させる医薬品であり,固形がん領域ではその成功例として,2022年にアメリカ食品医薬品局(FDA)が承認したtebentafuspがある.この薬剤はgp100ペプチドとCD3を標的とした二重特異抗体であり,未治療の転移性ぶどう膜悪性黒色腫に対して全生存期間の延長を示すランダム化比較試験で有効性が示され,米国における薬事承認を取得した.2024年4月時点で,既治療の小細胞肺がんに対するtarlatamabの承認申請も進行中である.固形がんにおけるT-cell engagerの開発にはいくつかの課題があり,そのひとつは腫瘍選択的な医薬品活性を持たせることであり,正常組織を攻撃するリスクを避けながら,腫瘍細胞を効果的に攻撃することが求められる.また,有害事象の克服も重要であり,特にサイトカイン放出症候群(CRS)などの副作用に対処する必要がある.これに対応するため,薬剤機序の工夫や適切な標的の選定が行われており,他にも誘導する免疫細胞の工夫〔キメラ抗原受容体(CAR)-NK細胞療法やNK cell engager〕の研究も進んでおり,併用療法の検討も将来的な展望として期待されている.
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