Japanese
English
特集 がん微小環境の統合的解明と治療への応用
はじめに
Introduction
藤田 直也
1
Naoya FUJITA
1
1公益財団法人がん研究会がん化学療法センター
pp.175-175
発行日 2024年4月20日
Published Date 2024/4/20
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28903175
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 参考文献 Reference
現在,がんそのものを標的とするだけでなく,がんを取り囲む微小環境を標的とした治療法の開発が盛んに行われるようになってきている.Douglas Hanahan教授とRobert A Weinberg教授が2000年に『Cell』誌に発表した “The hallmarks of cancer”1)でも,腫瘍組織内に包含される血管内皮細胞や間質細胞などのバイスタンダー細胞が腫瘍増殖に大きな影響を与えていると記述されている.こうした腫瘍増殖におけるがん微小環境の重要性は,Stephen Paget医師により『Lancet』誌で発表された,がんの転移先臓器選択性には転移先臓器の環境が重要であるとの仮説 “Seed and soil theory”2)が発表された100年以上前からすでに知られていた事例でもある.解析技術が当時は追いついておらず,がん微小環境がもたらす腫瘍増殖への関与の分子機序は永らく不明であったが,近年の1細胞解析技術をはじめとする技術革新や数理科学によるシミュレーション技術の発展などにより,腫瘍組織に含まれる免疫細胞・間質細胞との相互作用や,細菌叢を含めた臓器連関などによる腫瘍増殖誘導機構が次々に解明されており,改めて腫瘍増殖におけるがん微小環境の重要性がクローズアップされている.そのため,“The hallmarks of cancer” も “The next generation”3),そして “New dimensions”4)へとupdateされ,がん微小環境に関する新たなホールマークも追加されている.
Copyright © 2024 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.