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特集 ニューロエコノミクス(神経経済学)とは何か?――ヒトの価値観が生まれる脳の仕組みの理解とその先の未来
神経科学的手法を用いた幸福度測定への批判的検討
A critical examination of measuring happiness using neuroscientific methods
山田 克宣
1
Katsunori YAMADA
1
1近畿大学経済学部経済学科
キーワード:
幸福度測定
,
スティグリッツレポート
,
幸福の経済学
Keyword:
幸福度測定
,
スティグリッツレポート
,
幸福の経済学
pp.113-116
発行日 2024年4月13日
Published Date 2024/4/13
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28902113
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ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ教授によってまとめられた政策レポートで,“主観的幸福度” の動きに注目しながら経済政策を行うことが提言された.しかし,幸福度を経済政策の評価に使ってよいかどうかは,人間が幸せであると感じる感情の強さを正しく測定できるかどうかにかかっている.ここで問題となるのは,感情の表現の仕方は決して1~10といった,閉じられた尺度だけで行われるものではないということである.実際,経済学の考え方では人間の感情の表現に上限はなく,いくらでも好きな値をとることが可能とされている.そこで,金銭報酬を得た時の嬉しさの度合いを報告する際の脳活動を記録するfMRI(functional MRI)実験を行い,嬉しさの報告に心理学的な幸福度を用いる時と,経済学的な上限のない自由な方法で報告を行う時の脳活動の差を分析した.その結果,閉じられた尺度(幸福度)を用いた時に喜びの過剰報告が明らかになり,その際,頭頂皮質や線条体の活動負荷が上昇していることから,報酬系のネットワークで相互フィードバックが起きていることが示唆された.
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