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第1土曜特集 自然リンパ球の生理と病理
ILC3による腸管上皮細胞のフコシル化誘導
Induction of fucosylation of intestinal epithelial cells by ILC3
森 大地
1
,
後藤 義幸
1,2,3,4
Daichi MORI
1
,
Yoshiyuki GOTO
1,2,3,4
1千葉大学真菌医学研究センター感染免疫分野微生物・免疫制御プロジェクト
2同災害治療学研究所 災害感染症研究部門
3同感染症ワクチン開発研究部門
4同未来粘膜ワクチン研究開発シナジー拠点(cSIMVa)
キーワード:
3型自然リンパ球(ILC3)
,
フコシル化
,
腸管神経系(ENS)
Keyword:
3型自然リンパ球(ILC3)
,
フコシル化
,
腸管神経系(ENS)
pp.85-89
発行日 2024年1月6日
Published Date 2024/1/6
DOI https://doi.org/10.32118/ayu2880185
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腸管は細菌やウイルスなどの異物に恒常的に曝露されているという特徴があり,生体防御システムの最先端を担う.ヒトの腸管にはおよそ1.0×1014の細菌が存在し,有害な病原性細菌と無害な常在菌が混在している.そのため,宿主には病原性細菌を排除し,常在菌とは共生するシステムが内在している.腸管では上皮細胞と免疫細胞の協調的な免疫システムと腸内細菌のクロストークが存在し,その破綻は炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)やアレルギー疾患など,さまざまな疾患の誘導に関わる.たとえば,腸管上皮細胞の一種であるパネート細胞は,上皮幹細胞のニッチを形成することで腸管恒常性を維持するだけでなく,αディフェンシンなどの抗菌ペプチドを管腔内に分泌することで感染防御も担っている.また腸管上皮細胞と免疫細胞は,炎症性サイトカインを介して協調的に病原体の排除を担うことが示されてきた1).さらに腸管上皮細胞の管腔面には糖鎖が付加されており,糖鎖の一種であるα1,2フコースは,腸内細菌との共生因子として機能することが報告されている2).本稿では,このような腸内細菌と腸管上皮細胞,免疫細胞の相互作用を示す具体例として,腸内細菌による3型自然リンパ球(Group 3 innate lymphoid cell:ILC3)を介した腸管上皮細胞の糖鎖修飾,とりわけα1,2-フコースの誘導(フコシル化)と制御機構について概説する.さらに近年報告されている腸管神経系(Enteric Nervous System:ENS)とILC3およびフコシル化の関係性についても概説し,その広範囲に及ぶ相互作用を紹介したい.
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