ダイヤモンド・プリンセス号隔離期間における乗船者のメンタルヘルス

Mental health of passengers and crews on the Diamond Princess cruise ship during the quarantine period

ダイヤモンド・プリンセス号の新型コロナウイルス検疫事案

　2020年2月5日，横浜港でダイヤモンド・プリンセス号への検疫が開始された^1）（図1）．乗客2,666人，乗員1,045人を含む3,711人が乗船していた巨大クルーズ船は，香港で下船した乗客が新型コロナウイルス感染症（COVID-19）に感染していることが判明したため，感染拡大を恐れた日本政府によって隔離された．56カ国から集まった2,600人以上の乗客は，当日下船の予定であったが，感染拡大を防ぐため2月23日までの2週間船室に隔離された．隔離期間中，乗客は感染制御のため船室内に行動を制限された．感染者数は毎日増加し，合計712人の乗客・乗員がCOVID-19に感染した．世界は日本の取り組みに懸念を示し，自国民だけ救出する国も現れた．検疫に際しては感染管理，患者移送，乗客・乗員のメンタルヘルスなど，隔離に伴うさまざまな問題が生じた．本事案は連日メディア報道され，世間の衆目を集め，わが国におけるCOVID-19感染拡大の嚆矢となった．