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第1土曜特集 人生100年時代を見据えて がんと生活習慣病(心疾患/糖尿病/CKD/MAFLD)を再考する──共通リスク因子,予防・治療の最新アプローチ
慢性疾患とがん
肥満症とがん
-――病態連関・鍵となる分子イベント
Obesity and Cancer
――Fundamental molecular mechanisms linking obesity to its higher cancer prevalence
喜多 俊文
1
,
下村 伊一郎
1
Shunbun KITA
1
,
Iichiro SHIMOMURA
1
1大阪大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学,同肥満脂肪病態学寄附講座
キーワード:
免疫チェックポイント
,
抗腫瘍免疫
,
自己免疫
Keyword:
免疫チェックポイント
,
抗腫瘍免疫
,
自己免疫
pp.777-782
発行日 2023年9月2日
Published Date 2023/9/2
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28610777
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肥満はさまざまな病態と関連するが,がんもそのひとつである.肥満ががんの原因となっていることは,遺伝子レベルで規定される肥満の進行度が複数のがん種において,がんの発症と関連することから明らかにされている.肥満とがんを結びつける根本的なメカニズムはまだ不明であるが,いくつかの重要な要因が特定されている.インスリン抵抗性に伴う高インスリンは成長因子として作用し,細胞増殖を促進し,細胞死を阻害することで,がん細胞の増殖を促進していると考えられる.閉経後女性において,脂肪組織からのエストロゲン生成の増加は,乳がんや子宮内膜がんなどのホルモン反応性がんの増殖を促進する.同様に,テストステロンレベルの低下など,男性の肥満に関連したホルモン変化もがんの発症に寄与する.肥満における過剰な蓄積脂肪組織は,構造的および機能的変化を起こし,脂肪細胞が分泌する,レプチン,アディポネクチン,TNF-αなどのさまざまなアディポサイトカインの産生量が変化することで,さまざまな細胞の成長,代謝,炎症などに影響を与える可能性がある.肥満脂肪組織での慢性炎症は,細胞増殖,血管新生,免疫系の調節不全をサポートする環境を作りだすことで,腫瘍の発生と進行を促進する可能性がある.免疫チェックポイント阻害薬に代表されるように,腫瘍に対する免疫はがんの発症・進展を抑制する重要な役割を担っている.肥満がこのような腫瘍免疫に対し悪影響を及ぼすことも,肥満ががんのリスクとなる主要な要素と考えられる.
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