特集 放射線治療―最近の話題―
放射線治療により誘導される抗腫瘍免疫と“免疫放射線療法”
吉本 由哉
1
,
佐藤 浩央
1
,
鈴木 義行
2
1群馬大学 重粒子線医学研究センター
2福島県立医科大学医学部 放射線腫瘍学講座
キーワード:
抗腫瘍免疫
,
免疫放射線療法
,
T細胞
,
免疫チェックポイント阻害剤
Keyword:
抗腫瘍免疫
,
免疫放射線療法
,
T細胞
,
免疫チェックポイント阻害剤
pp.1663-1671
発行日 2017年11月10日
Published Date 2017/11/10
DOI https://doi.org/10.18888/rp.0000000187
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免疫チェックポイント阻害抗体が華々しい成功を収めている。2011 年に切除不能,転移性悪性黒色腫(メラノーマ)に認可されたイピリムマブ(抗CTLA—4 抗体)の長期フォローアップデータでは,3 年以降の生存曲線がプラトーに達しており1),一部患者では完治に近い効果が期待された。ニボルマブ(抗PD—1 抗体)では初めにメラノーマ,その後肺癌に適用を拡げ,第Ⅰ相試験で進行または再発非小細胞肺癌に対して5 年生存割合16%という結果が2017 年AACR(米国癌学会)総会で報告された。従来,癌は臨床的にⅠ〜Ⅳ期にステージ分けされ,転移を有するⅣ期や再発癌は不治とされていたが,これらの長期生存の報告は,それを覆すインパクトのある結果である。一方で,宿主の免疫が本当に癌を認識し,それを排除する能力をもっているかについては長い間議論が戦わされてきており,最近までは抗腫瘍免疫の存在,癌治療における意義・重要性については懐疑的な見方をする医師・研究者が大勢を占めていた。 免疫の力で癌を治療しようとの試みにはすでに100 年近い歴史がある。丹毒患者で癌が自然縮退した報告などをヒントに,外来微生物に免疫賦活作用があり,この免疫賦活作用を利用して免疫で癌を排除できる可能性が考えられ,1900 年代には“Coley’s toxin”,その後1970 年代からは結核菌製剤(BCG),溶連菌製剤(OK—432)などのアジュバント治療が試みられてきた。本邦においても,これらの薬剤は保険適用薬として臨床現場で用いられていた。
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