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第1土曜特集 統合失調症の未来――研究と治療
分子病態
統合失調症のエピゲノムを標的とした治療薬
Development of epigenome therapeutics for schizophrenia
向井 淳
1
,
福田 茉由
1
Jun MUKAI
1
,
Mayu FUKUDA
1
1筑波大学プレシジョン・メディスン開発研究センター精密精神医学分野
キーワード:
SETD1A
,
クロマチンリモデリング
,
H3K4メチル化
,
リジン特異的脱メチル化酵素1(LSD1)阻害薬
,
作業記憶
Keyword:
SETD1A
,
クロマチンリモデリング
,
H3K4メチル化
,
リジン特異的脱メチル化酵素1(LSD1)阻害薬
,
作業記憶
pp.545-553
発行日 2023年8月5日
Published Date 2023/8/5
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28606545
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脳の発達や機能において,遺伝子発現や機能を調節するエピジェネティックな制御が重要な役割を担うことが明らかになってきている.統合失調症の患者死後脳における研究によって,エピジェネティックな機能が統合失調症の遺伝的リスク構造に関連する証拠が見出され,エピゲノム制御機構の障害が病態生理における重大な要因となりうることが示唆された.最近の大規模なWES(whole exome sequense)解析によって見出された統合失調症と新たな因果関係を持つultra-rare coding variants(URVs)遺伝子のひとつであるSETD1Aは,ヒストンメチル化酵素をコードし,ヒストンをメチル化し,転写を制御する.その標的遺伝子は統合失調症のリスク遺伝子座に濃縮される.Setd1aの転写制御ネットワークを標的としたエピジェネティックなモジュレーター薬の使用によって,疾患マウスモデルの認知機能障害が改善されることが示された.神経細胞転写制御ネットワーク制御因子のエピジェネティックな状態を変更する直接的および間接的な治療戦略は,統合失調症の認知機能や神経回路の障害を克服できる可能性がある.
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