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第1土曜特集 自律神経のサイエンス
消化管と自律神経
迷走神経がつなぐ脳による腸管バリア機能調節
Vagal dependent regulation of intestinal barrier function by the brain
奥村 利勝
1
Toshikatsu OKUMURA
1
1旭川医科大学内科学講座病態代謝・消化器・血液腫瘍制御内科学分野
キーワード:
腸管バリア機能
,
腸管透過性亢進(leaky gut)
,
オレキシン
,
迷走神経
,
過敏性腸症候群(IBS)
Keyword:
腸管バリア機能
,
腸管透過性亢進(leaky gut)
,
オレキシン
,
迷走神経
,
過敏性腸症候群(IBS)
pp.579-584
発行日 2023年5月6日
Published Date 2023/5/6
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28506579
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過敏性腸症候群(IBS)の主要病態に腸管透過性亢進(leaky gut)がある.この発症メカニズムを解明し,病態を改善してIBSの治療を目指すことは合理的である.IBSの病態は脳腸相関が基本となる.しかし,腸管透過性制御の中枢神経機構についての知見は限定的で,筆者らは神経ペプチドであるオレキシンを中心とする中枢メカニズムを網羅的に研究中である.オレキシンに加えて,脳内グレリン,オキシトシンシグナルやbasal forebrain cholinergic neuron(BFCN)がleaky gutを改善することをラットleaky gutモデルで明らかにした.また,腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸である酪酸は中枢神経系に作用してleaky gutを改善することが示唆された.そして,これらのメカニズムには迷走神経が重要な役割を果たしていることも明らかになってきた.脳内オレキシンや迷走神経を治療ターゲットにすることで,leaky gut関連疾患であるIBSなどの機能性疾患から敗血症といった全身性の強い炎症による致死率の高い疾患まで,まったく新たな治療法を生み出せる可能性がある.
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