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特集 生体内リプログラミングによる個体生命機能の制御
はじめに
Introduction
山田 泰広
1
Yasuhiro YAMADA
1
1東京大学大学院医学系研究科病因・病理学専攻分子病理学分野
pp.851-851
発行日 2023年3月18日
Published Date 2023/3/18
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28411851
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- Abstract 文献概要
多種多様な細胞から構成される多細胞生物の細胞運命は安定的に維持されており,臓器・組織の機能が保たれている.一方で,細胞分化異常など細胞運命の制御異常は,がんをはじめとするさまざまな疾患の原因となる.個々に異なる細胞のアイデンティティは,エピゲノム制御と転写因子が協調して形成する転写ネットワークにより維持されている.iPS細胞の樹立成功に代表されるように,一過性の転写因子の発現誘導により転写ネットワークの書き換えが可能であり,さまざまな細胞種において細胞アイデンティティの転換,すなわち,リプログラミングが実証されている.近年,このような細胞運命転換技術を生体に応用する生体内リプログラミングの試みが盛んに行われている.実際に,生体内リプログラミング技術の進歩により,細胞運命転換を介した個体生命機能への人為的な介入が可能であることが示され,再生医療の開発のみならず,さまざまな疾患に対する治療戦略開発にも適用されつつある.また,リプログラミング技術による細胞運命の摂動に対する生体組織応答を解析することで,個体レベルでの組織機能の恒常性維持機構の理解も深化している.
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