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軟骨内骨化とC型ナトリウム利尿ペプチド
大腿骨や上腕骨など主として四肢を構成する長骨は軟骨内骨化とよばれる骨化様式で形成される.長骨は骨端に形成される成長板を構成する軟骨細胞に主として依存して伸長するため,軟骨細胞の機能異常は骨伸長障害を引き起こす.線維芽細胞成長因子受容体(fibroblast growth factor receptor:FGFR)3遺伝子の変異によって引き起こされる軟骨無形成症は四肢短縮性低身長をきたす代表的骨系統疾患である1).FGFR3変異による過剰な分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(mitogen−activated protein kinase:MAPK)シグナル活性化が軟骨細胞増殖や細胞外マトリックス分泌を低下させるという病態分子機序が提唱されている.C型ナトリウム利尿ペプチド(C−type natriuretic peptide:CNP)は1990年にわが国で同定されたナトリウム利尿ペプチドファミリーメンバーのひとつであり,強力な骨伸長促進作用を有することから骨系統疾患への応用を目指した多くの研究が行われてきた2).疾患モデルマウス等を用いた解析から,CNPはその特異的受容体で膜型グアニル酸シクラーゼであるNPR2を介してMAPKシグナルを抑制することにより軟骨無形成症に治療的効果を発揮することが報告されている3).これらの研究に基づいた臨床試験が行われヒト軟骨無形成症患者への有効性が確認された結果4,5),CNPアナログペプチドVOXZOGO®が2021年に欧米で,2022にわが国でも「骨端線閉鎖を伴わない軟骨無形成症」に対して承認されるに至った.しかし,CNPはFGFR3変異を伴わない正常な骨に対しても伸長促進作用を有しており,CNPの骨伸長作用に寄与する軟骨細胞内シグナル経路の理解は不十分と考えられた.また,軟骨無形成症の薬物治療の観点からも正確な細胞内シグナル経路の解明が必要と思われた.
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