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はじめに
高齢者の代表的認知症性疾患であるアルツハイマー病(Alzheimer's disease;AD)やレビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies;DLB)の患者脳内では,特定の蛋白質が細胞内あるいは外に凝集体を形成することが特徴である。すなわち,ADでは老人斑と神経原線維変化が,DLBやパーキンソン病(Parkinson's disease;PD)ではレビー小体が病理学的な診断マーカーである。これらの凝集体の主要構成蛋白はすでに同定されており,老人斑ではアミロイドβ蛋白(Aβ),神経原線維変化ではタウ,レビー小体ではα-シヌクレインである。さらに,1990年代から近年に及ぶ遺伝研究によって,これらの蛋白質をコードする遺伝子の突然変異や重複(gene multiplication)などが発症の原因となるが明らかとなった。これらのことより,神経変性疾患は異常な蛋白質の凝集・蓄積によって引き起こされることから,タウが蓄積している疾患群をタウオパチー(tauopathy),α-シヌクレインが蓄積している疾患群をシヌクレオパチー(synucleinopathy)と呼ぶようになった。
さらに2006年,タウ陰性ユビキチン陽性封入体を有する前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration with tau-negative,ubiquitin-positive inclusions;FTLD-U)と筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis;ALS)に出現する封入体の主要構成成分が核蛋白であるTAR DNA-binding protein of 43 kDa(TDP-43)であることが判明した3,17)。その後,FTLD-UとALS以外のさまざまな神経疾患の患者脳においてもTDP-43の蓄積が生じていることが明らかとなり,これらはTDP-43 proteinopathyと総称されるようになった。本稿では,主としてTDP-43 proteinopathyに関する概念の変遷,遺伝子変異例を含めた臨床像と病理像の対応,現時点で判明している病態生理から期待される治療法などについて解説する。
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