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特集 X染色体不活化と疾患――新たな展開
非メンデル遺伝とX染色体不活性化異常
-――思い込みを除いて,新たな発見へ
X chromosome inactivation abnormalities in non-Mendelian inheritance
小林 慎
1
Shin KOBAYASHI
1
1国立研究開発法人産業技術総合研究所細胞分子工学研究部門
キーワード:
X染色体不活性化(XCI)
,
Ftx non-coding RNA
,
性差を示す疾患
Keyword:
X染色体不活性化(XCI)
,
Ftx non-coding RNA
,
性差を示す疾患
pp.853-858
発行日 2022年11月26日
Published Date 2022/11/26
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28309853
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X染色体不活性化(XCI)は哺乳類の雌の発生に必須で,その仕組みが破綻すると雌は胎児期に死亡すると考えられている.しかしこの通説に反し,筆者らが作製したFtx long non-coding RNA(lncRNA)の欠損マウスは,XCIに異常を示すが致死にならず雌のみで散発的に小(無)眼球症を示すことがわかった.FtxはXistとともにXCIの制御領域であるX染色体不活性化中心(Xic)に含まれ,Xistの発現を正に制御するlncRNAである.その欠損により,本来不活化されるはずの一部の遺伝子が漏れ出てしまうことをつきとめた.特に興味深いのは,Ftxの欠損は次世代に遺伝し,その表現型は顕性(優性)遺伝,潜性(劣勢)遺伝のパターンで説明がつかない非メンデル遺伝を示す点である.通常,X連鎖遺伝子の変異は雌より雄のほうが重篤な症状を示すが,Ftxノックアウト(KO)マウスはその逆で,雌でのみ表現型が現れる.このマウスモデルの結果から,XCIに変異は遺伝しうることが明らかになった.今後,XCIの変異は性差を示すヒト疾患解析の新しい手がかりになると期待される.
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