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特集 X染色体不活化と疾患――新たな展開
霊長類におけるX染色体遺伝子量補正
The X chromosome dosage compensation program in primates
岡本 郁弘
1
Ikuhiro OKAMOTO
1
1京都大学高等研究院ヒト生物学高等研究拠点
キーワード:
霊長類
,
カニクイザル
,
X染色体不活性化(XCI)
,
XCU(X chromosome up-regulation)
Keyword:
霊長類
,
カニクイザル
,
X染色体不活性化(XCI)
,
XCU(X chromosome up-regulation)
pp.859-864
発行日 2022年11月26日
Published Date 2022/11/26
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28309859
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哺乳類の両性間でX染色体と常染色体上の遺伝子間に生じる量的不均衡を補正するために,X染色体では雌で1本を不活性化する.常染色体とX染色体の差については,両性でX連鎖遺伝子発現量を2倍化する.X染色体遺伝子量補正は胚発生初期に起こるため,ヒトを含む霊長類ではそのダイナミクスが長らく不明であった.最近,筆者らは霊長類のモデル動物であるカニクイザルを用いて,霊長類の胚発生過程におけるX染色体遺伝子量補正ダイナミクスを明らかにした.遺伝子発現抑制は,胚が着床する受精後9日目胚から17日目胚におよそ1週間かけて,栄養膜細胞層(CT),羊膜(amnion),上胚盤葉(エピブラスト),下胚盤葉(ハイポブラスト)の順に組織特異的に遺伝子発現抑制が起こる.X連鎖遺伝子発現上昇は雄胚で,着床前の受精後6日目胚から20日目胚にかけて連続的に起こり,雌胚でX染色体の遺伝子発現抑制と同時に起こることが判明した.筆者らの成果が霊長類X染色体遺伝子量補正研究の礎となり,さらに研究が進むことが期待される.
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