Japanese
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特集 発がんのメカニズム/最近の知見
染色体異常と発がん―転座によるがん遺伝子の活性化
Oncogenesis involved in chromosome translocation
福原 資郎
1
,
大野 仁嗣
1
Shirou Fukuhara
1
,
Hitoshi Ohno
1
1京都大学医学部第一内科
pp.37-40
発行日 1990年2月15日
Published Date 1990/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900008
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一般に,腫瘍クローンにみられる染色体の構造異常は,核型進化の面より初発変異とこれに付随する続発変異に分けられる。リンパ系腫瘍には,未分化型腫瘍と分化型腫瘍に大別すると対照的に異なる初発変異を認める1)。分化型腫瘍は,リンパ球の分化に伴って発現する機能遺伝子(TCR:T細胞受容体遺伝子,Ig:免疫グロブリン遺伝子)の座位に関連した構造異常が好発する。すなわち,T細胞側腫瘍では,7q34-36(TCR-β)転座や7p15(TCR-γ)が見られるようになり,もっとも分化したATLや末梢性Tリンパ腫-白血病では,14q11(TCR-α)切断異常が好発する。最近,14q11に座位するTCR-α遺伝子内にはTCR-δの遺伝子座位のあることが証明された。分化型B細胞腫瘍では14q32(IgH)転座が好発する。これらの染色体転座は,それぞれに位置するリンパ球固有の機能遺伝子とがん関連遺伝子との結合を誘発することによりがん関連遺伝子を活性化する造腫瘍性初発変異と考えられる。
こうした分子細胞遺伝学の進歩に先立つ1978年以来2),われわれは14q32転座を初発変異とし,発がん機転を共有する腫瘍群として要約される14q32転座型腫瘍(14q+マーカー陽性腫瘍)の概念を提唱してきた(図1)3)。
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