FORUM 書評
『免疫学者のパリ心景 新しい「知のエティック」を求めて』
武田 昭
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1国際医療福祉大学病院アレルギー膠原病科,聖路加国際病院Immuno-Rheumatology Center
pp.1167-1168
発行日 2022年9月24日
Published Date 2022/9/24
DOI https://doi.org/10.32118/ayu282131167
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読者の人生に大きなインパクトを与える叡智の書
この本が出版されたことに大いに歓喜している人間の一人である.本書の梱包を解いてからは,まさに,一気に読み切ってしまった.この面白さあるいは感動のようなものは何なのか? かつて経験したことがあるような気がして,記憶の糸を辿ってみて……思い出すことができた.それは,まだ小学生だった私が,小澤征爾のエッセイ『ボクの音楽武者修行』(1962年初版)に出会ったときに味わった感覚だった.弱冠24歳の小澤青年が「西洋音楽をやるためにはその音楽の生まれた土地に住む人間をじかに知りたい」という信念から,スクーターでのヨーロッパ一人旅に向かい,ブザンソン国際コンクールの指揮部門で優勝し,カラヤンやバーンスタインに出会い,NYフィル副指揮者に就任するまでを語った自伝的エッセイであるが,そこには,若き日のマエストロの挑戦が,音楽をできる喜び,尊敬する人々との触れ合いとともに鮮やかに描かれ,彼が飛び込んだ欧州さらに米国での経験の瑞々しい描写は,私がのちに海外での自分の力試しを夢見て30代を米国Boston近郊での研究生活に身を置くことになる,その大きな動機にさえなった.
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