連載 水引き草の詩(うた)—ある看護教師の闘病記・4
術後四景
藤原 宰江
1
1岡山県立短期大学
pp.704-707
発行日 1988年7月1日
Published Date 1988/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922040
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早期離床
昭和61年12月18日,汎発性腹膜炎を伴う結腸憩室炎のために開腹手術を受けた私は,3時間に及ぶ手術に耐えた後,夜半になって目を覚ました.どれほどの時間眠り,何があったのか全くわからない.自分ではほんの一瞬のように思ったが,昏睡状態に陥ってからゆうに8時間は経っていたようである.
リカバリールームでの目覚めは穏やかだった.ゆっくりと細胞の1つ1つが息づき始め,次から次に仲間を起こしていくような感じである.しかしそのわりには,術後の苦痛は強烈なものだった.痰がからんで呼吸のできない苦しさ,傷の痛み,のどの痛み.体中に十指に及ぶチューブを取り付けられ,磔(はりつけ)同然の腕やお尻に次々と針が刺し込まれ,何とも哀れというほかはない.
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