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特集 計画的セレンディピティが医学・創薬を革新する!
はじめに
Introduction
合田 圭介
1
Keisuke GODA
1
1東京大学大学院理学系研究科化学専攻,カリフォルニア大学ロサンゼルス校工学部生体工学科,武漢大学工業化学研究院
pp.797-797
発行日 2022年8月27日
Published Date 2022/8/27
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28209797
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- Abstract 文献概要
セレンディピティと科学の進歩は密接な関係にある.セレンディピティ(serendipity)とは,英国の小説家であるホレス・ウォルポールが「セレンディップの3人の王子(The Three Princes of Serendip)」という童話にちなんで生み出した造語であり,素敵な偶然の出会いや予想外の発見を意味する.科学における発見の歴史を繙くと,セレンディピティが実際に起きた事例は多々みつかる.たとえば,1895年のヴィルヘルム・レントゲンによるX線の発見,1898年のピエール・キュリー,マリ・キュリー夫妻によるラジウムの発見,1922年と1928年のアレクサンダー・フレミングによるリゾチームとペニシリンの発見,1964年のアーノ・ペンジアスとロバート・ウィルソンによる宇宙背景放射の発見,1967年の白川英樹らによる導電性高分子の発見,1985年の田中耕一によるソフトレーザー脱離イオン化法の発見など数えきれない.当初は失敗だと思っていた実験結果が,実は世紀の大発見だったという事例も多い.これらのセレンディピティな発見は,その当時の研究者がまったく予期していなかったため当初は研究界から反発を受けたりしながらも,後に大きな業績として評価され,すべてノーベル賞の受賞に至っている.
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