Japanese
English
TOPICS 臨床検査医学
ナノスーツ技術による感染症への診断戦略
Diagnostic strategy of infection with NanoSuit technology
河崎 秀陽
1
Hideya KAWASAKI
1
1浜松医科大学光尖端医学研究教育センター ナノスーツ開発研究部
pp.764-766
発行日 2022年8月20日
Published Date 2022/8/20
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28207764
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ナノスーツ法とは,浜松医科大学で独自開発された生物適合性高分子溶液を使用し,試料周辺にナノ薄膜を短時間の内に形成させる方法である.針山らは,ショウジョウバエの幼虫が細胞外に分泌し体表面を保護する粘性の細胞外物質(extra cellular substance:ECS)に電子線やプラズマを照射することで,高真空下でも乾燥することなく生きた状態で高分解能走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)を用いて観察できることを見出した1).これは電子線あるいはプラズマ照射によってECSが重合することでナノ薄膜が形成され,生体内部に含まれる気体や液体が高真空環境下でも保持されるためである.生物を規範とするバイオミメティクス的発想により,ショウジョウバエのECSを模倣して界面活性剤などの生体適合性物質を選択し,これを多様な生体表面に塗布しプラズマ重合することで生きたまま/濡れたままで電子顕微鏡観察を可能とした.この手法はwetなサンプルをそのまま簡便に電子顕微鏡観察するという画期的な概念変革がなされた手法となり,手軽に観察できる対象物が格段に増えた.医療応用も研究され,光学顕微鏡で同定したパラフィン切片上の注目した部位を非破壊的に高解像度かつ立体的に簡便・迅速にSEM観察できるという病理診断の可能性を示した2).
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