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特集 腫瘍と糖鎖――糖鎖の基礎研究から腫瘍の分子標的同定に向けて
レクチン融合薬を用いた糖鎖標的がん治療戦略
Application of lectins for glycan targeting cancer therapy
下村 治
1,2
,
舘野 浩章
2
,
小田 竜也
1
Osamu SHIMOMURA
1,2
,
Hiroaki TATENO
2
,
Tatsuya ODA
1
1筑波大学医学医療系消化器外科
2産業技術総合研究所細胞分子工学研究部門
キーワード:
レクチン
,
糖鎖
,
分子標的治療
,
膵がん
Keyword:
レクチン
,
糖鎖
,
分子標的治療
,
膵がん
pp.907-910
発行日 2022年5月28日
Published Date 2022/5/28
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28109907
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細胞の最外層は細胞特有の糖鎖で覆われているため,がんの治療を考えるうえで細胞膜上のコアタンパク質を狙うより,糖鎖を標的することは効率的と思われる.筆者らは,レクチンマイクロアレイで膵がん細胞に発現する糖鎖構造(フコシル化糖鎖)と,それに反応するrBC2LC-Nレクチンの組み合わせを同定した.このレクチンに緑膿菌外毒素A(PEA)を融合したレクチン融合薬(LDC)が膵がん細胞株に対してIC50=1.08pg/mLと非常に高い殺細胞効果を示し,各種膵がんマウスモデルに対しても高い治療効果を有することを確認した.糖結合タンパクであるレクチンは血液凝集素として発見されてきたため,これまで生体に投与する安全性は確立されていない.今回同定したrBC2LC-Nレクチンは偶然にもヒト血球を凝集しない性質を持つことがわかり,レクチンが糖鎖を標的とした新しい薬剤担体となりうるため,創薬応用への可能性を検証している.
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