シリーズ最新医学講座・Ⅰ 糖鎖と臨床検査・4
セレクチンと糖鎖
内村 健治
1
Kenji UCHIMURA
1
1国立長寿医療センター研究所
キーワード:
リンパ球
,
ホーミング
,
炎症
,
硫酸化
Keyword:
リンパ球
,
ホーミング
,
炎症
,
硫酸化
pp.465-471
発行日 2008年4月15日
Published Date 2008/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101581
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はじめに
リンパ球のリンパ節へのホーミングおよび白血球の末梢炎症部位への血行性移入は,1991年に提唱された多段階の分子シグナルによって厳密に制御されている(図1)1,2).すなわち,ターゲットとなる組織の血管内で血液中を流れる細胞は,セレクチンとその認識リガンドである細胞表面糖鎖の蛋白質-糖鎖の比較的弱い相互作用を利用し,血管内皮細胞上でローリングと呼ばれる現象を示し流速を減少させる(第1段階).その後,内皮細胞上に提示されたケモカインとローリング細胞上のケモカイン受容体が結合し,ローリング細胞に活性化シグナルが入る(第2段階).このシグナルがローリング細胞上のインテグリンを活性化し,内皮細胞上の細胞接着分子との蛋白質-蛋白質の結合を利用し強固な接着を引き起こす(第3段階).最終的に細胞は,血管内皮細胞層をすり抜けて血管外遊走し組織内へ移入する(第4段階).本稿では,この多段階モデルの最初のステップであるセレクチンとそのリガンド糖鎖について述べる.ケモカインのシグナル機構,およびインテグリンの活性化については他の総説3)に詳しい.
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