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現在の免疫療法の主軸である免疫チェックポイント阻害薬は,マイクロサテライト不安定性(MSI)を有しない大多数の大腸がんでは効果が期待できない.そのため,大腸がんの免疫療法はDNAミスマッチ修復機構欠損(dMMR)/高頻度MSI(MSI-high)を中心として治療開発が進んでいる.dMMR/MSI-highの大腸がんは,MMR遺伝子の機能低下により,変異タンパク質が蓄積しやすいため,がん抗原を産生しやすく,免疫細胞から認識されやすいと考えられている.実際に,KEYNOTE(KN)-016試験ではdMMR/MSI-highの大腸がん患者でペムブロリズマブによる治療で良好な結果がみられ,その後,KN-164,KN-177によりペムブロリズマブは未治療の切除不能進行・再発MSI-high大腸がんに対する標準治療として確立されるに至った.またCheckMate(CM)-142試験の結果,既治療例ではニボルマブまたはニボルマブ+イピリムマブも治療選択肢として加わっている.しかし,リンチ症候群はdMMR/MSI-high大腸がんというサブセットが確立する100年ほど前にすでに発見されており,さまざまな臨床病理学的研究が行われていた.当時は,遺伝子とがんの関連が重要視されておらず,研究は日の目をみていなかったが,遺伝性腫瘍の患者と家族に悲嘆に寄り添い,研究を続けた偉大な医学者の功績があったことは特筆すべき点である.本稿では,リンチ症候群発見の物語まで遡り,現在の大腸がんに対する免疫療法へと至る “医学のあゆみ” を概説しながら,今後の日常診療において臨床医がリンチ症候群とどのように向き合っていくのかについて考察する.
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